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ネットに蠢く21世紀の「妖怪」



精神科医・作家なだいなだ氏の妖怪学入門という本の「嘘と妖怪」という項の中でこのように語っています。

「人は何のための嘘をつくか?
それは自分の言動を正当化するためである。
では、なんのために「正当化」しようとするのか?
それは自分の名誉、プライド(あるいは見得?)を守るためである。

中でも「臆病」と呼ばれる不名誉を忌避するため、多くの人々が「嘘」をついてきた。
「暗闇を恐れる」「未知なる物への恐れ。」
それらへの恐れを誤魔化すために人々は「妖怪」や「怪獣」を創造したのではないか?
また、自らを権威付けするために嘘をつく場合もある。
世の中は何の実績も無い人間を評価する事は無い。
それゆえ・・・
「俺はこんな恐ろしい妖怪(あるいは怪物)を退治した!!」という嘘を付き、自ら命がけで「実績」を作る事なしに自らを権威付ける。

こういった場合は本人よりその側近が嘘を付く場合が多いのだが、いずれにせよその「嘘」によって「妖怪」や「怪獣」が作り出され、後世に伝わって来たのである。」


今、ネットにもこのような嘘によって生み出された
「妖怪」が徘徊しているのではないでしょうか。
匿名性の暗闇の中に潜み
「実体無き」マルチハンドルを駆使した人間によってネットへの放たれた、他者への誹謗中傷、あるいは現実から極めて遊離した「妄言」、あるいは掲示板に対するアラシ行為という「妖怪」が。


それらの「妖怪」は前記の
「嘘」
特に自分の
名誉プライド(あるいは見得?)を守るため、または自らを権威付けしたい、あるいは「憂さ晴らしの正当化」という人間の感情がその根源となっているのではないでしょうか。

しかし、ここで勘違いして欲しくないのは「妖怪」とはその発言を書き込んだ人間の事ではなく、その人物の
投稿によって生じた現象こそが「妖怪」であるという事です。
基本的に「妖怪」というものには実体がありません。
その実体の無さこそが妖怪を妖怪たらしめているものなのです

同様に匿名のマルチハンドルによって放たれた発言にも
実体はありません。
数多くのHNを駆使する事により発言者の「個」は曖昧となりその正体はいよいよもってわからなくなるからです。
Yahoo!軍事カテゴリーに現れた「妖怪」などはその典型であると私は考えます。
その妖怪はあるHNでは
11歳の少年を名乗り、また別のHNで22歳の女性を名乗り、そしてまた「年齢不詳」の複数の男性を名乗りそれぞれ「別人」と称して数多くの投稿をしています。

その事により、この人物の
年齢はおろか、その性別までもが不明になっています。
これはすでに「個人」ではありません。
実体の無い「何か」としか呼びようがないでしょう。
我々がネットの掲示板で認識できるその
投稿者の実体の無い発言の数々…これも一種の「妖怪」と言えるのではないでしょうか。


では、そもそも「妖怪」とは何でしょう?

広辞苑によると
妖怪…人知では解明できない奇怪な現象、または異様な物体、ばけもの」
…と記されています。
わたしが
「妖怪=現象」としているのは、この広辞苑の記述を根拠としています。

著名な民俗学者柳田国男氏は幽霊と妖怪をこのように対比させています。

お化け(妖怪)と幽霊の区別(「妖怪談義」より)
・第一に、おばけは出現する場所が決まっているのに対し、幽霊はどこへでも現れる。
・第二に、おばけは相手を選ばず、誰にでも現れるのに対し、幽霊の現れる相手は決まっていた。
・第三に、おばけの出現する時刻は宵と暁の薄明かりの時であるのに対し、幽霊は丑満つどきといわれる
 夜中に出現した。
・おばけとは、前代信仰の零落した末期現象の姿であり、かつては神々のすがたであった。

ネット社会を迎えた現代に誕生した「妖怪」にも柳田氏の説に当てはまる部分が多いと思います。
第一の「おばけ(妖怪)は出現する場所が決まっている。」
ネットの妖怪は
ネットの掲示板にしか現れませんし、掲示板の中でのみ怪異を発揮します。
第二の「おばけは相手を選ばず、誰にでも現れる。」のも同様です。
その姿は何しろ公開された掲示板上の
「発言」として現れるので誰にでも見ることが出来、また掲示板に書き込む投稿者ならば、誰でもその「妖怪」の怪異に襲われます。

また、諏訪春雄氏は妖怪と幽霊の違いをこのように定義づけしています。

「もともと人間であったものが死んだ後、人の属性をそなえて出現するものを幽霊、人以外のもの、または人が、
人以外の形をとって現れるものを妖怪というように考えておく」
「現状と前身に、人間以外の存在が関与するのが妖怪、しないのが幽霊。」

諏訪氏の説もまたネットの「妖怪」に符合する部分があります。
諏訪氏は「人が人以外の形を取って現れるものが妖怪」と言っています。
確かに投稿する人間は確かに我々と同じ人間でしょう。
しかし、その人間がネットにアクセスし、
匿名性に隠れマルチハンドルで素性を曖昧にされ放なたれた投稿という姿で「妖怪化」しています。
さらにコンピューターという
人間以外の機械が介在し投稿という形で現れるという点も同じです。

この妖怪を「封じる」にはどうすればようのでしょうか?
いみじくも諏訪氏は妖怪を封じる方法に言及しています。

「妖怪は、しばしばその異界性ともいうべき超自然性やその他界性を失って現世の秩序に組み込まれてしまう事
がある(正体がばれる等)のに対し、幽霊がその他界性を失って現世の秩序に組み込まれてしまうことはない
(他界へ去っていく等)。」


ネットの妖怪も匿名性とマルチハンドルいう
「異界性」「他界性」を祓う事によってその力を失い我々現世の秩序に組み込む事ができるのではないでしょうか?

妖怪の無力化には
「正体がばれる」というものの他に、「名前をつける。」というのがあるといわれます。
ネットの妖怪に
「固定HN」という名前をつければ、その妖怪も現世秩序の内に組み込まれ「祓う」事が出来るのではないでしょうか?

つまり、HNを一つに制限させ、その投稿は「A」と名乗る個人の発したある意味、実体ある物にするのです。

確かにHNだけでは現実世界の氏素性は判りませんが、ネット上では単なる「一投稿者」という
「現世」の存在にはなるでしょう。

そうなれば、その「A」というHNが「誹謗中傷」や「非論理的妄言」を発したとしても、我々はその「A」の投稿を「無視」するだけで良くなります。
また、Yahoo!掲示板には一つのHNでは一定以上の投稿が出来なくなるという投稿制限があります。
それによって「A」の蠢動はかなり押さえ込まれるでしょう。

ネットの中の妖怪を「封じる」のは
「現世の秩序」なのです。
そのためにも
マルチハンドルを禁じ、また規約違反投稿に対する罰則強化という現世の秩序が必要です。

「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」
ネットの闇に光を当てれば怪異は祓えます。

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